Overview about this real estate
二つの玄関と二つの坪庭を有する京町家。純粋な居住用として建てられたと思われる家ですが、元々職住一体の建築物として店舗と住居が並存する京町家の特性の名残か、片方の玄関と坪庭は来客をもてなす為に、もう一方は家人の生活の為に使われていたことがうかがえました。
二つの玄関と坪庭の意味合いをそのまま受け継ぎ、それぞれハレ(非日常)の間と、ケ(日常)の間を造りました。ハレの間はわずか二畳ほどの小さな茶室。お茶を点ててお客様をもてなすなど、都会の喧騒を忘れる非日常を楽しむ空間です。ケの間は無垢フローリングが心地良いリビング。現代の生活スタイルに合わせた快適な時間を過ごす空間です。ハレの間とケの間のあいだには中の間があり、日常と非日常をゆるやかにつなぐ緩衝空間になっています。
ハレの間とケの間、二つの空間が町家の暮らしを彩ります。
Point about this real estate
非日常を楽しむ
ハレの間。
京町家に刻まれた歴史を受け継ぐ
ハレの玄関(左)とケの玄関(右)。どちらの玄関にも下地窓が造られ、この町家が意匠にこだわって建てられたことがうかがえます。元々この京町家が持つハレとケの性質を大切に受け継ぎ、ふたつの玄関をそのまま残しています。
わずか二畳の茶室が空間を豊かにする
ハレの間は前庭をのぞむわずか二畳ほどの小さな茶室です。坪庭をのぞむ雪見障子、柔らかく光を落とす下地窓、花掛けをしつらえた床柱など、小さいながらも茶室のしつらえを有した空間です。親しい人を招いてお茶を点て、坪庭をながめながら団欒のひとときを過ごす、座椅子とお気に入りの本を持ち込み読書にふける、ただゆったりと坪庭を眺めるなど、非日常の時が流れる特別なハレの空間です。
街中の喧騒を忘れる静謐の時間が流れる
ハレの間からのぞむ前庭は、江戸時代創業、京都の数多くの名勝を手掛ける京都の老舗の造園企業による作庭です。
アプローチから前庭へと飛石が続き、その先に蹲踞が静かに佇みます。
筧から蹲踞に落ちる水音に耳を澄ませば、街中の喧騒から切り離された静謐の世界が広がります。
Point about this real estate
日常を過ごす
ケの間。
現代の生活様式に適したリビングで快適に過ごす
建物の奥には日常を過ごすケの間が広がります。ハレの間とは異なり、床暖房を設置した無垢フローリング敷きの洋室とし、現代の生活スタイルに適した空間にしています。ケの間の床レベルを和室から一段下げることで空間に緩急を生み出しています。
Point about this real estate
ハレとケをゆるやかにつなぐ
中の間。
日常と非日常がゆるやかにつながる
ハレの間とケの間の緩衝空間となる中の間。間口が狭く奥行が長い京町家の形状上、中の間は暗くなりがちですが、既存の下地窓を生かすことで、柔らかな光を取り込みながら町家の仄暗い情緒を残しています。ハレの間・ケの間の間仕切りにはそれぞれ引き込み型の建具をしつらえ、建具を閉め切ったり開け放ったりすることで様々に空間を使うことができます。
光を受けたからかみがはっとする表情をみせる
中の間には、老舗京からかみ企業で修業ののち独立された版画造形作家による唐紙襖をしつらえました。この町家のほど近くに建つ寺社仏閣からインスピレーションを受けた大胆な図柄を用いつつ、空間に溶け込む淡い色合いで上品に仕上げています。坪庭からの光を受けて輝く雲母(きら)が、見る角度や光の入り方によって時折はっとするような美しさを見せます。