Overview about this real estate
北野天満宮のほど近くに広がる静かな住宅街。道を挟んだ両側に京町家が軒を連ね、所々空き地や新築建物に変わっているものの、京都のかつての趣ある町並みを今に伝えています。そんな街に佇む一軒の織屋建の京町家をリノベーションしました。細い通り庭を進んだ先には、背の高い織機を置くための伸びやかな土間空間が広がり、外観からは想像がつかない開放感にあふれています。坪庭に面した窓からは優しく光が射し込み、古い壁や柱の質感を印象的に浮かび上がらせています。
織屋建の最大の魅力である開放感を活かし、吹抜けのリビングをつくりました。白いペンキで簡易に仕上げられていた壁を落とし、土壁に戻すことで元の趣ある姿を再生。天井をはしる既存梁は塗装せずに埃を落として磨くだけにとどめ、素材そのものが持つ艶やかな質感を取り戻しました。外観は建築当時の姿をできるだけ再現するため、開口部や腰壁の形状を変えずに傷んだ部材を遣り替えました。古い壁の下に隠されていた飾り虫籠窓を再生し、痛んだ格子を真鍮に取り換えるなどして、周囲の景観に溶け込む町家へと生まれ変わりました。
Point about this real estate
建築当時の姿を
再生。
時とともに風合いを深める真鍮の格子
リノベーションにより遣り替えた真鍮の格子。昭和初期、人々の間に西洋建築が広まるにつれて真鍮格子が使われるようになったと言われ、昭和初期型の京町家に多く見られる意匠です。施工時は鮮やかな色ですが、時間とともに錆びが出て変色し、独特の風合いが生まれてきます。
Point about this real estate
織屋建ならではの
吹き抜けリビング。
織屋建の構造を生かした吹抜けの大空間が広がる
機織り工場(こうば)と居住スペースを併設する織屋建の京町家ならではの開放感を生かして、巨大な織機が置かれていた工場部分を吹抜けのリビングにリノベーションしました。坪庭に面した掃き出し窓と欄間窓から暖かい陽の光が室内に射しこみ、中塗り仕上げの土壁に柔らかな表情を描きます。柿渋塗装により自然な風合いで仕上げたフローリングの床には床暖房を設置し、一年中心地良く過ごせます。
Point about this real estate
北野天満宮東の
京町家。
ゆらめくガラスがかつての趣を今に伝える
吹き抜けのリビングと坪庭を見下ろす2階の居室の窓は既存建具を修繕・利用しています。「ゆらゆらガラス」と呼ばれる波打ったような独特の歪みを持つガラスは、現代の様にガラス製造技術が発達していなかった大正~昭和に製造された貴重なもので、ゆらめくガラス越しに見る眺望は、どこか昔懐かしさを感じさせます。