町家のリノベーション

私たちが町家のリノベーションプランを考える際にいちばん大切にしているのは、「光と風を取り入れる」ということです。

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はじめて上京区のとある町家を見に行ったとき、上の写真のように家の奥の坪庭部分(南側)は真っ暗でした。一部に水回りが増築されていた上に、屋根で覆われ、ほとんど光が入らない状態です。
京都の町家の敷地は間口が狭く奥行が長い「うなぎの寝床」になっているところが多く、お風呂等が無い場合も多いため、水回りを増築する際に、部屋の間口を維持するためにお風呂やトイレで坪庭をふさいでしまうことがよくあります。

以前、京都を中心に全国的に活動されている著名な設計士の方の話を聞く機会がありました。その時に言われたのは、「とにかく、光を入れましょう。」ということ。
その言葉がとても印象的でした。朝目覚めたとき、日中リビングで過ごしているとき、自然光を感じることは人にとってとても大切だということです。

増築等により閉ざされてしまった坪庭を再生し、自然の光と風が入る家にする。

リノベーション後、真っ暗だった奥の部分はこのようになりました。

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京町家の古建具

先日、改装中のとある町家に使用する古建具の選定のため、古建具店を訪れました。

訪れたのは、御所南にある井川建具店さん。
弊社が町家のリノベーションを行う際に、いつもお世話になっている古建具店さんです。

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井川さんの店内には様々な種類の大量の古建具が所狭しと並べられています。

この日、まずは玄関の上り口の古建具を探していることを伝えると、
「それやったら、この間ちょうど良い建具が入って…」とお店の奥に入って行かれるご主人。

 

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大量の古建具の中から、写真の板戸をさっと取り出して見せて下さいました。
「かなり古い建具やけど、かえっていい味が出てます。」とおっしゃる通り、
比較的状態が良く、経年変化による独特の風合いや古色の色合いが美しい板戸です。早速こちらの古建具を使うことを決定。決定した建具にはテープ等で印を付けます。

次に、部屋と部屋の間仕切りに使用するガラス戸を選定するため、ご主人と共にお店から少し離れた場所に位置する倉庫へと向かいました。

 

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倉庫にはお店以上に大量の古建具が保管されていて、
写真のように、何枚も重ねて並べられた古建具の間に、大人一人がやっと通れる程度の通路が確保されています。その隙間を縫うように倉庫の奥へ進むと、さらに大量の古建具が収納されています。

町家のリノベーションは新築住宅とは異なり、既存の建物を利用するため、基本的には古建具の寸法と建物の開口部の寸法が合わなければ使用することができません。
そのため、意匠と寸法の両方を確認しながら、古建具を選定していきます。

 

京町家の古建具

京町家の風情を演出する大切な要素のひとつ、古建具のお話しです。

柱と梁の構造で造られる町家(日本家屋)は開口部の面積が大きく、その大きな開口部を壁ではなく建具で仕切るという文化を持ちます。
そのため、どのような古建具を使用するかが家の雰囲気を大きく左右します。

町家をリノベーションするにあたり、元々町家に良い古建具が残されている場合は既存古建具を適宜補修して使用しますが、古建具が残されていない場合や新建材の建具に取り換えられている場合、古建具を扱うお店で新たに古建具を選びます。

 

今回は、現在掲載中のリノベーション済京町家物件「哲学の道の隠れ家」で新たに選定した古建具をご紹介します。

 

 

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こちらは玄関間とDKを仕切る古建具。上部に木製の細工、中央部は型ガラスと透明ガラスがあしらわれています。京町家でよく見られる古建具です。
古建具店のご主人によると、京都の古建具は写真のようにシンプルな意匠のものが多く、デザインの種類もある程度限定されているとのこと。

この部屋は、ご近所の方や急な来客に対する簡易な接客の場や、荷物の受け取り場所として使うことを想定しています。そのため、家の奥にあまり目線が入らないよう、型ガラス(不透明なガラス)が多く使われた古建具を選定しました。
一方で、北向きの部屋の為、採光に配慮し、型ガラスに挟まれる形で細い透明ガラスをあしらった建具を選んでいます。
透明ガラスからDKや座敷の様子がちらちらと伺えるため、仕切られた空間でありながら隣の部屋とのつながりや坪庭からの光を感じられる心地良い空間になっています。

 

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こちらはDKと座敷を仕切る古建具。
先程の古建具とは異なり、かなり細かな細工の建具になります。
上部には凝った意匠が施され、中央部には狭い間隔で桟があしらわれています。
このように細かな意匠や桟の間隔が狭いものは、北陸地方でよく見られる古建具です。シンプルなDKのアクセントとなるよう、北陸地方の細かな細工が施された古建具を選定しています。