「町家の日」の制定

この度、弊社所属団体「京町家情報センター」一般社団法人日本記念日協会にて、3月8日を「町家の日」に制定いたしました。

 

町家の日

 

京町家情報センターとは、京町家の流通・活性化を目的とした、京町家を扱う京都の不動産企業と京町家再生研究会から成る団体です。

ここ数年、町屋を改修した宿泊施設・セカンドハウス・投資用物件等、
町家ブームと言えるほどに町家物件の需要が高まっています。
国内の方だけでなく、海外の様々な国の方が町家を買い求めに来られることも増えました。

しかしながら現在でも、依然として町家の取り壊しは続いています。
町家所有者の高齢化や建物の老朽化による維持管理の難しさ、需要と供給のミスマッチ等、町家の流通の活性化には多くの課題があります。

京町家は長い歴史を通じて人々に受け継がれてきた大切な知恵や文化であり、また重要な観光資源です。

今後、「町家の日」が広く認識され、全国の町家の在り方について考えるきっかけになればと思っています。
京町家情報センターの方でも、町家に関するイベント等を開催していきたいと考えています。

京町家の京唐紙

先日の京町家の京唐紙に続き、弊社のリノベーション町家に使用している京唐紙についてのお話しです。

 

 

下の写真は弊社リノベーション物件「北山、土間の家」の床の間にしつらえた京唐紙。こちらも「京からかみ 丸二」さんの唐紙です。

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京都三大祭の一つ、平安時代に始まった「葵祭」が行われる上賀茂神社近くの物件であることから、上賀茂神社の神紋にちなみ、「二葉葵」の文様の京唐紙を選びました。

摺り色に、雲母(きら)と呼ばれる花崗岩を原料とした輝きのある塗料を使用しています。

唐紙の表情が最も美しいのは、室内の照明を消し、坪庭や天窓からの自然光のみを光源とした雲母の輝きを見る時かもしれません。

常に同じ明るさを造りだす現代の照明器具とは異なり、自然光は時間帯や天候によって刻々と表情を変えます。

普段はひっそりと町家に溶け込む唐紙も、見る角度や光の入り方により、上の写真のようにはっとした輝きを見せます。

 

 

 

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現代のような電気照明設備が無かった時代、室内を照らすのは、坪庭や天窓からの光と蝋燭の灯でした。
限られた光源に照らされた雲母の輝きは、ほの暗い町家の中で光を感じるための大切なしつらえだったのでしょう。

 

時折家の中の照明を消して、唐紙の控えめな輝きを静かに楽しむひとときは、
町家暮らしの楽しみのひとつです。

 

京町家の京唐紙

町家のリノベーションにおいて、襖紙は室内装飾の重要な要素となります。
弊社のリノベーション京町家では、襖紙に京唐紙をしつらえています。

唐紙とは、奈良時代に中国の唐から伝わった、美しい文様の装飾された紙のことです。
平安時代には当時の都であった京都で「京唐紙」として発展し、貴族や僧が文字を書くために使用していましたが、時代と共に襖や屏風等の室内装飾としても用いられるようになったとされています。

弊社がよく使わせていただくのは、京唐紙の老舗企業「京からかみ 丸二」さんの京唐紙。

京からかみ丸二さん ウェブサイト

絵具を塗った版木に紙を重ね手の平で紙を摺り文様を写しだす、伝統的な手刷りの技法で唐紙を作製されています。

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写真は弊社リノベーション物件「上京区の京町家」しつらえた、「光琳松」と呼ばれる文様の唐紙の襖。

松の木をデフォルメしたどこかユーモラスな光琳松の文様は、江戸時代を代表する絵師、尾形光琳らの絵柄をアレンジした「光琳文様」と呼ばれるものの一つ。
自然の草花や生物をモチーフにした慎ましやかな光琳文様は町家によく合うとされ、特に町民の間で好んで使用されてきました。

この唐紙を見た時、松の文様一つ一つの自然な濃淡と控えめな立体感の美しさに驚きました。
よく見るとどの松もそれぞれ表情が異なり、ユーモラスな姿も相まって、まるで生物のようです。全体を眺めるだけでなく、文様一つ一つにじっくり見入ってしまいました。

人が手の平で紙を刷る手刷りの技法にしか生み出せない、温かみのある美しい唐紙です。

町家のリノベーション

私たちが町家のリノベーションプランを考える際にいちばん大切にしているのは、「光と風を取り入れる」ということです。

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はじめて上京区のとある町家を見に行ったとき、上の写真のように家の奥の坪庭部分(南側)は真っ暗でした。一部に水回りが増築されていた上に、屋根で覆われ、ほとんど光が入らない状態です。
京都の町家の敷地は間口が狭く奥行が長い「うなぎの寝床」になっているところが多く、お風呂等が無い場合も多いため、水回りを増築する際に、部屋の間口を維持するためにお風呂やトイレで坪庭をふさいでしまうことがよくあります。

以前、京都を中心に全国的に活動されている著名な設計士の方の話を聞く機会がありました。その時に言われたのは、「とにかく、光を入れましょう。」ということ。
その言葉がとても印象的でした。朝目覚めたとき、日中リビングで過ごしているとき、自然光を感じることは人にとってとても大切だということです。

増築等により閉ざされてしまった坪庭を再生し、自然の光と風が入る家にする。

リノベーション後、真っ暗だった奥の部分はこのようになりました。

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京町家の古建具

先日、改装中のとある町家に使用する古建具の選定のため、古建具店を訪れました。

訪れたのは、御所南にある井川建具店さん。
弊社が町家のリノベーションを行う際に、いつもお世話になっている古建具店さんです。

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井川さんの店内には様々な種類の大量の古建具が所狭しと並べられています。

この日、まずは玄関の上り口の古建具を探していることを伝えると、
「それやったら、この間ちょうど良い建具が入って…」とお店の奥に入って行かれるご主人。

 

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大量の古建具の中から、写真の板戸をさっと取り出して見せて下さいました。
「かなり古い建具やけど、かえっていい味が出てます。」とおっしゃる通り、
比較的状態が良く、経年変化による独特の風合いや古色の色合いが美しい板戸です。早速こちらの古建具を使うことを決定。決定した建具にはテープ等で印を付けます。

次に、部屋と部屋の間仕切りに使用するガラス戸を選定するため、ご主人と共にお店から少し離れた場所に位置する倉庫へと向かいました。

 

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倉庫にはお店以上に大量の古建具が保管されていて、
写真のように、何枚も重ねて並べられた古建具の間に、大人一人がやっと通れる程度の通路が確保されています。その隙間を縫うように倉庫の奥へ進むと、さらに大量の古建具が収納されています。

町家のリノベーションは新築住宅とは異なり、既存の建物を利用するため、基本的には古建具の寸法と建物の開口部の寸法が合わなければ使用することができません。
そのため、意匠と寸法の両方を確認しながら、古建具を選定していきます。

 

京町家の古建具

京町家の風情を演出する大切な要素のひとつ、古建具のお話しです。

柱と梁の構造で造られる町家(日本家屋)は開口部の面積が大きく、その大きな開口部を壁ではなく建具で仕切るという文化を持ちます。
そのため、どのような古建具を使用するかが家の雰囲気を大きく左右します。

町家をリノベーションするにあたり、元々町家に良い古建具が残されている場合は既存古建具を適宜補修して使用しますが、古建具が残されていない場合や新建材の建具に取り換えられている場合、古建具を扱うお店で新たに古建具を選びます。

 

今回は、現在掲載中のリノベーション済京町家物件「哲学の道の隠れ家」で新たに選定した古建具をご紹介します。

 

 

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こちらは玄関間とDKを仕切る古建具。上部に木製の細工、中央部は型ガラスと透明ガラスがあしらわれています。京町家でよく見られる古建具です。
古建具店のご主人によると、京都の古建具は写真のようにシンプルな意匠のものが多く、デザインの種類もある程度限定されているとのこと。

この部屋は、ご近所の方や急な来客に対する簡易な接客の場や、荷物の受け取り場所として使うことを想定しています。そのため、家の奥にあまり目線が入らないよう、型ガラス(不透明なガラス)が多く使われた古建具を選定しました。
一方で、北向きの部屋の為、採光に配慮し、型ガラスに挟まれる形で細い透明ガラスをあしらった建具を選んでいます。
透明ガラスからDKや座敷の様子がちらちらと伺えるため、仕切られた空間でありながら隣の部屋とのつながりや坪庭からの光を感じられる心地良い空間になっています。

 

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こちらはDKと座敷を仕切る古建具。
先程の古建具とは異なり、かなり細かな細工の建具になります。
上部には凝った意匠が施され、中央部には狭い間隔で桟があしらわれています。
このように細かな意匠や桟の間隔が狭いものは、北陸地方でよく見られる古建具です。シンプルなDKのアクセントとなるよう、北陸地方の細かな細工が施された古建具を選定しています。