「丸窓の京町家」リノベーションの様子

先日ブログにてご紹介した明治築の京町家に続き、「丸窓のある京町家」の改装が終盤に差し掛かりました。

既存の丸窓をそのまま残し、隣り合う寝室(和室)と書斎(洋室)へと改装しています。
前道の幅員が広いため、丸窓には透明ガラスをはめ込み豊かな採光と眺望を確保しています。丸窓の内側には引分けの障子を設置していますが、障子を閉めても丸窓のシルエットが美しく浮かび上がり、その風情を楽しむことができます。

丸窓の横、書斎側には大きなコーナー窓があり、広い前道へと視線が抜けるすがすがしい空間です。収納横の壁面には書斎として使えるよう小さなカウンターテーブルと棚を設けていますが、窓前に愛用の書斎机と椅子を置いて、窓の外に広がる開放感を楽しみながら作業をするのも良いかもしれません。

 

こちらは玄関間の様子。表の通りに面した窓から格子越しに柔らかい光が射し込みます。

地袋には、いつもお世話になっている「京からかみ 丸二」さんの唐紙をあしらっています。
唐紙は原紙・摺り色・紋様の組み合わせ方が無数にあり、どういった組み合わせを選ぶべきかいつも頭を悩ませるのですが、楽しい作業でもあります。毎回、建物や所在地の歴史、部屋の使用用途、建物全体の雰囲気など様々な要素を考慮して選定しています。
この町家では、周囲の壁と馴染む唐氏色の原紙に、格式高い利休大桐の紋様をあしらいました。摺り色はキラとし、紋様の印象の強さを残しつつ上品に仕上げています。

 

玄関間にしつらえた古建具。この町家は既存の古建具がほとんど残されていなかったため、古建具店で新たに選定したものも併せて設置しています。柱と梁で構成される京町家は建具が部屋の印象を大きく左右するため、デザイン性に富み、かつ建物の風情を損なわないような上品な建具を選ぶようにしています。特に、写真の様に細かな桟があしらわれた建具は、桟の隙間から隣接する空間が僅かに覗くことで、空間に奥行と立体感が生まれます。

 

間もなく完成となります。販売開始まで今しばらくお待ち下さい。

※誠に恐れいりますが販売前の物件詳細についてのお問い合わせにはお答えしておりません。何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。

「明治時代の京町家」リノベーションの様子

 

昨年から改装を行っていた京町家がようやく工事完了を迎えます。

正確な築年数は不明ですが、明治時代に建てられたと思われる2階建の京町家です。落ち着いた通りに面しており、室内は十分な広さがあります。縦にミセノマ・中の間・ダイドコ・座敷の4室が並び、その奥に坪庭を構える典型的な京町家の間取りを有していました。

この町家の持つ趣を生かすため、縦に居室が並ぶ間取りをそのまま残して改装しています。天井は既存の大和天井・竿縁天井ともに比較的状態が良く、幅広で質の良い天井板が使われていたため、最低限の修復のみ行い、年数を経た材にしか出せない艶や質感を生かしています。

座敷の既存の床柱は、現代では希少な赤松をそのまま利用。元は床柱に食い込むように造作棚が設置されていましたが、造作棚を撤去し、古材と竹を使ったシンプルな吊り棚をつくりました。

ダイドコには元々この場所に残されていた小さな箱階段を設えています。箱階段も建物と同じく明治のものと思われるため、経年変化による劣化がありましたが、丁寧に解体・修復して再生しました。一応箱階段から2階へ上がることも可能ですが、勾配が非常に急で踏面も狭いため、この家の歴史を感じられるインテリア的な要素としてディスプレイしています。垂れ壁の後ろにスポットライトを仕込み、箱階段を印象的に照らすよう工夫しています。

 

2階の居室から階段を見下ろしたところ。
階段部分は京町家の火袋を模した吹き抜けの空間にしています。天窓を設け、暗くなりがちな町家の中央部分に光を落としています。階段横の壁は既存の柱をあらわし、既存の壁の凹凸をそのまま残した上で修復しています。天窓からの柔らかい光が凹凸に描く陰影は、時間や陽の入り方によって刻々と変化し、一日中眺めていても飽きることがありません。

 

2階の階段奥には小さなテラスのような余剰空間を設けています。
当初は居室にする予定でしたが、火袋(吹き抜け)の趣を残すために壁を造らず、手摺越しに階下を見下ろす遊び心のあるスペースにしています。背面には既存窓をそのまま残しているため、光が射し込む明るい空間です。

これから畳や古建具、唐紙襖が入り、改装完了となります。
完成まで今しばらくお待ちください。

※誠に恐れ入りますが、販売前の物件詳細等についてのお問い合わせにはお答えしておりません。何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。

光悦桐の京からかみ

販売中の全面リノベーション済京町家「蘆山寺(ろざんじ)通の角町家」の
地袋に京からかみをしつらえました。

蘆山寺(ろざんじ)通の角町家 詳細はこちら

 

京町家の地袋と唐紙小さな和室に造り付けた地袋。
赤味の強いケヤキの地袋と調和するよう、畳や塗壁に似た淡い黄緑がかった色を選んでいます。
京唐紙は弊社の他のリノベーション京町家でも何度か使わせていただいている老舗唐紙企業「京からかみ 丸二」さんのものです。
一枚一枚、熟練の技により手摺りで作られた唐紙です。

天井に仕込んだスポットライトが地袋と唐紙をぼんやりと浮かび上がらせています。

 

京都の京唐紙唐紙の文様は「光悦桐」。

桐は昔から格式高い文様として公家や茶人に好まれ使われてきましたが、
この光悦桐は装飾性が高くユーモラスにデフォルメされており、町人の間で広く愛されてきました。上品な中にどこかかわいらしさを感じるデザインです。

光悦桐は江戸時代に作られたと言われる文様ですが、現代でも全く古さを感じさせないのが、京からかみの不思議な魅力です。

蘆山寺(ろざんじ)通の角町家  初のオープンハウス開催

新規物件 全面リノベーション済京町家「蘆山寺(ろざんじ)通の角町家」
初のオープンハウスを開催致します。

日時:平成29年9月9日(土)・10日(日) 13時から16時まで

蘆山寺通の京町家 詳細はこちら

上京区の改装済京町家上京区を東西にはしる蘆山寺(ろざんじ)通に面した角地の京町家。
蘆山寺通が広いため、京町家に多いせせこましさを感じさせない佇まいです。隣には町家が2軒ならび、また周囲にも町家が点在しているため、広い通りに面しながらも落ち着いた京都の風情が残る場所です。
物件の所在地は「上京区戌亥(いぬい)町」という町ですが、戌亥とは北西をあらわす方位です。一説によると、京都市内中心部から見た時にこの場所が北西方向に位置するため、戌亥町という町名が付けられたと言われており、この町が古い歴史を持つことが伺えます。

 

上京区の改装前の京町家
この物件は以前店舗として使われており、写真の様にファサードがモダンに改装されていましたが、今回のリノベーションで京町家らしい外観に再生しました。正面の外壁は隣2軒の町家に馴染むよう黄味がかった色で塗装。格子窓は南からの採光を十分に得るためやや大きめにしていますが、隣2軒の町家と趣を合わせ木製ではなく鉄の格子をあしらっています。
年々町家が減少し町家が軒を連ねる家並みも珍しいものとなりつつありますが、リノベーションで外観に町家を取り戻すことで、かつての京都の町並みを再生しました。

 

町家の仁丹の看板

2階南西角には希少な仁丹の看板を設置しています。
京都市内中心部や伏見区でよく見かける仁丹の看板ですが、町家の消失と共に姿を消しつつあります。町家を改装し残すことで仁丹の看板も共に次の世代へと引き継げたらと思います。
看板の横、祇園界隈の簾も手掛けておられる「伊吹すだれ」さんの簾がかかる簾掛けは、現場の職人の方が作成したもの。「正面はこの家の顔になるし、見栄えようせなあかんな」と作っていただいた簾掛けは、透かし彫りの入ったデザイン性のあるものになっています。ぜひ現地でご覧いただければと思います。

 

町家の和室から坪庭を見て先ほどオープンハウス準備のため現地を訪れましたが、正面の格子窓と坪庭に面した奥の窓を開け放つと、心地良い風がすっと家の中を通り抜け、残暑厳しい季節とは思えないすがすがしさに驚きました。今まで色々な町家を訪れましたが、前の道が広く奥の坪庭が開けている町家は風の通りがよく涼しさを感じるように思います。
快晴のため室内は照明が不要なくらい明るく、一方で光の射す角度によってほのかに暗い場所も生まれ、すみずみまで落ち着ける空間でした。

初のオープンハウス、どうぞお気軽にお越しください。
お待ちしております。

 

京町家 リノベーション最終打合せ

改装も大詰めを迎えた京町家の最終打合せを行いました。

 

町家の木製ポスト職人の方に大まかなデザインと大きさを伝え、細かな部分はお任せしていた造作ポスト。確認のため現場に行くと、A4サイズの郵便物が入る立派なポストが出来上がっていました。〒マークの透かし彫りが入ったレトロなデザインの木製ポストです。
玄関扉前の目隠し格子に取り付けていきます。

 

町家の屋根を支える腕木

2階は現代の住環境を考慮し全室勾配天井とし、町家特有の天井高の低さを解消。
既存の天井板に隠れていた腕木(写真、屋根を支え骨組み)をあえて見せ、部屋のアクセントにしています。
天井には杉板を貼り木そのものの温もりが心地良い空間に。杉板は色を乗せず軽い仕上げにすることで勾配天井の開放感を損なわないようにしています。

 

京町家のすだれ

2階正面の窓には新たにすだれ掛けを取り付けました。
2階廊下の手すりと同じ彫りの意匠で仕上げ統一感を持たせています。
すだれは祇園・清水寺の近くにお店を構える「伊吹すだれ」さんに一枚一枚作製していただいた葦すだれです。祇園界隈のお茶屋さん等のすだれを数多く手掛けておられ、京の名工にも選ばれています。
通常よく使用する白っぽい葦の中に赤みの入った葦を混ぜ、京町家に合うすだれを作っていただきました。

京町家の改装打合せ

現在改装中の京町家の打合せを行いました。

正面が広い道路に面した角地に建つ京町家です。
建物自体は小ぶりですが、古建具や京唐紙、雪見障子と畳敷きの縁側越しにのぞむ坪庭、天井を横切るゴロンボなど、随所に京町家らしさを取り込れ、町家の情緒を大切にした家にしています。

 

町家の吹き抜け廊下

天井板を取り払い既存の梁や骨組みをあらわした2階の廊下。
小ぶりな建物は少しでも部屋を広く取ろうとするため
どうしても階段スペースが閉鎖的になりがちですが、
勾配天井にし天窓を設けることで閉塞感を無くしています。

壁面は聚楽壁の風合いを持つ落ち着いた質感と色味で仕上げ、
明るすぎない、町家らしい仄暗さを残した空間にしています。

 

京町家の階段手摺透かし彫りの美しい廊下の手摺。
計画当初はシンプルな横桟の手すりを設置する予定でしたが、
現地打合せの際に職人の方の提案により写真の様な透かし彫りを施したデザインに変更しました。
模様は町家によく見られるスタンダードなものを選び嫌味なく空間に馴染むようにしています。

写真はありませんが、建物正面の2階に取り付けたすだれ掛けも
意匠を合わせて廊下の手摺と同じ透かし彫りで仕上げています。
細部にひと手間をかけることで町家らしい風情がぐっと高まりました。

 

京町家の和室とアクセントクロス2階、廊下と同様に勾配天井で梁をあらわした和室。
素木の小さな床の間の背面を藍色で仕上げ、空間を引き締めるアクセントにしています。
写真には写っていませんが、廊下と和室を仕切る戸襖にはいつもお世話になっている京唐紙の老舗企業「京からかみ丸二」さんの襖紙を使用します。

テラスがリビングになる、公園前の家 ご来場ありがとうございました

 

昨日、リノベーション京町家「テラスがリビングになる、公園前の家」の初のオープンハウスを開催致しました。
たくさんの方々にご来場いただきました。ありがとうございます。

 

町家のオープンテラス

幸いにも当日は晴れ、南向きのオープンテラスとリビングにはたっぷりの陽と風が舞い込み、暖かく明るい空間となっていました。
家の正面に広がる公園と大きな空の眺望、吹き抜ける風がすがすがしく、一日中テラスでまどろんでいたくなる心地よさでした。

 

 

京都駅を模したウッドデッキ

町家のテラスとリビング

 

リビングからフラットにつながるオープンテラスは、階段状になり、自転車やバイクを停められる土間(庭)へと続いています。
階段寸法は、京都駅の大階段を参考にしています。設計士が実際に京都駅へ行き大階段を測量した寸法を元に、大人でもゆったりと腰かけられる階段にしています。

オープンテラスには容量のある外部収納スペースやガーデンパンを設置しているので、水洗いが必要な作業も気兼ねなく行えます。
テラスと庭は板塀で囲っているので、ペットも安心して駆け回れる空間です。

土間の東側には、通路に面した勝手口を設けているので、自転車やバイクの出し入れに便利です。

 

ながめが良く明るい家をお探しの方、ペットと一緒にのびのびと暮らせる物件をお探しの方、広いオープンテラスでゆったりと過ごしたい方におすすめの物件です。

ご興味がありましたらお気軽にお問合せください。

町家の日

弊社が所属しております京町家情報センターの発案で、
3月8日が「町家の日」に制定されました。

年々減少する京町家。
「町家の日」は、京町家に触れることで、町家の文化や魅力について
考えるための日になればと考えております。

本年度は、3月8日を中心とした3月4日(土)?3月12日(日)を「町家ウィーク」とし、京都市内の町家で様々なイベントを開催します。

https://www.miyako-es.jpmachiyanohi.jp

町家の日
イベントは、町家でコンサートやマルシェ、お茶会など様々。

ぜひお気軽にご来場ください。

外壁の漆喰塗装

先日、改装工事中の町家で、外壁の漆喰塗装が行われました。

 

左官職人の方による漆喰塗装

今回のリノベーションでは、長年京町家の改修をされている左官職人の方に塗装をお願いしました。

何度も何度も鏝(こて)を往復させ、少しずつ塗られていく漆喰。

「町家の外壁に真っ白の漆喰を使うと、格子や腰板の木部の古色とのコントラストが強く出すぎるから、うちではグレーがかった色の漆喰をよく使う」という左官職人の方の言葉の通り、淡くグレーがかった浅葱色(あさぎいろ)の漆喰が丁寧に塗り込められていきます。

落ち着いた色合いの漆喰が木部の古色と壁とのコントラストをやわらげていきます。

 

漆喰の下地

こちらの写真は漆喰を塗る前の外壁の下地の状態です。
まるで一枚の紙をぴんと張ったかように端正に塗りこめられた壁に、スサの温かみが町家らしい風情を添えています。
漆喰を重ねるのが惜しくなるほど美しい中塗り壁です。

町家や寺社仏閣の工事に携わってこられたベテランの大工の方からよく聞くのが、
「長年大工をやっていると大抵の工程は自分でできるようになるけど、
左官だけは別」という言葉。

熟練の左官職人の方により仕上げられたファサードの漆喰壁は、まさにこの町家の顔となる部分。その端正な表情が、周囲の町並みに溶け込む落ち着いた佇まいを演出します。

 

書斎

 

 

 

 

 

 

内部工事も終盤に差し掛かっています。
写真は無垢材の造作テーブルと本棚がある小さな書斎。
元々部屋の一角の収納として使われていたスペースを利用しています。

わずか2帖半ほどの小さなスペースですが、吹抜に面して開口を取ることで
心地良い通風と採光を確保しています。
吹抜を通じて階下の家族の気配を感じながら書き物やパソコン作業を行える
隠れ家のような空間です。

改修工事もいよいよ大詰めとなり、まもなく完成を迎えます。

町家の木部塗装

もうすぐ完成予定の改装町家の塗装打合せを行いました。

 

町家の塗装
町家の改装物件は新築物件とは異なり、
既存の柱や梁などの古色の木部と、
改装工事で新しく造り付けた柱や棚などの
素木の木部が同じ部屋に混在します。

部屋全体のバランスを見ながら、新設木部を
どのような色味でどこまで塗装すべきか、
塗装職人の方を交えて一か所一か所
相談しながら決めていきます。

 

この町家では、改装工事で新しく造り付けた建具枠や敷居等の新設木部を
既存木部に合わせて古色の塗装を施すことで、室内に統一感を出し、
落ち着いた雰囲気に仕上げることにしました。

 

 

町家のアクセントクロス

一方、新設の無垢材をあしらったLDKの天井は、
木そのものの美しさを生かすために透明な保護塗料のみを塗装。
透明な塗料が木に染み込むことで、木目が浮かび上がり自然な艶と表情が生まれます。

 

LDKの壁には藍色のアクセントクロスを使用。
和紙に似た柔らかい質感を持つ和紙クロスを使用しています。
日本の伝統色として古くから親しまれてきた藍色は既存木部にも新設木部にもよくなじみ、この町家を一層落ち着いた空間へと引き立てています。